拍手お礼小説


「花井、俺三橋送ってくから後頼むな。だってよーハハハ」
「なーっ!んだよ、今の阿部。寒過ぎだろ」
「あぁ、お前は三橋の彼氏かっての」

「いや、あれは彼氏だろ」
「そうなん?」
「だろ?」
「えーでもさ、三橋って天然だから気付いてないんじゃね?」
「そういうところに付け込んでイロイロやってんじゃん?」

「イロイロって何よ?」
「そりゃーイロイロだよ、いろいろ」
「キャーエロっ!」

「おい、お前ら笑うなよ。あいつも三橋のこと心配して・・・」
「いや、あれは誰だって笑うぜ、なぁ!?」
「うん、ぜってー笑う」


「ったく断言するなよ・・・」

 テンポ良く交わされていた会話の内容と田島の即答に、花井は大きく溜息をついて悩ましげな表情を浮かべた。




夏雲2.5
2005.9.24




「大体阿部ってすっげー世話好きなんだよ」
「そうそう、三橋に構いたくてしょーがないって顔してるんだよな。阿部は何でもないフリしてるけどさー、バレバレだっちゅーの!」
「気付かないフリしてるこっちの身にもなれってのなぁ〜」


 先程から阿部と三橋の居なくなった部室は、一つの話題で持ちきりだった。室内から二人が出て行った途端、次に発せられる話のネタは決まっていたも同然だ。


 阿部は女子に人気がある。
 自分からはあまり多くを語らないが、勉強もそこそこ出来るし当然スポーツは得意分野だ。決して無口では無いけれど、騒がしい他の男子達と違い落ち着いている。そういう所が女子に言わせれば『クールで良い』らしい。
 休み時間になれば、わざわざ別のクラスから阿部目当てに7組にやって来る者も居る。女生徒達とすれ違えば、かなりの割合で黄色い声が上がる。

 高校生活にも少しずつ慣れ始める4月も下旬を過ぎた頃から、仲の良いグループが出来上がった女子達がカッコ良い男子を見つけては、日々彼女達の話題の中心に上がる。そして阿部も例外ではなく注目されるようになっていた。

 入学してまだ間もないというのに、『話がある』と一人呼び出されることだってすでにもう何度も経験している。その度に断りを入れるのは、泣かれて困ることだってあるし正直凄く面倒だと良く口にしているのだが、聞いてるこちらとしては只の厭味にしか聞こえなかった。
 阿部も阿部で面倒くさそうにしながらも、声を掛けられればそれなりに返事はするので、最近は止むどころか益々エスカレートしている。

(だったら相手にしなきゃいいのに)
                      ひが
 そう思ってしまうのはモテない男の僻みややっかみに聞こえるので、口が裂けても言いたくはないのだが。

 同じ男としては、あんな三橋命の男のどこが良いのか分からないが、それを言ったら女子達(もしくは阿部)に殺されそうなので、密かに胸に抱き仕舞っているのが実情だ。


 とは言いつつ、阿部同様特に人気のある花井を含め他の面々も結構モテる。水谷に至っては、社交的で世辞が上手いので上級生の知り合いも増えつつある。
 しかしながら、阿部の人気は彼らが陰で羨むほど、その中でも群を抜いたものだった。


 
 暗色の空の下、戸締りを花井に任せ続いて部室を後にした水谷と栄口が校庭の脇をやや早足で歩いていく。
 

「あーぁ。一人くらい分けろっての」
 水谷が愚痴のように不平を鳴らす。

「お前だって十分じゃんか」
「俺は所詮友達の延長だもんよ。本命が少ないのっ」

「まぁ仕方ないよ、阿部カッコいいもん」
「あー栄口、あいつの肩持つのかよ」
「そんなんじゃないけどさ。素直な意見を言ってみただけ」

「だって阿部って人気あるくせに、三橋のことしか頭無いじゃん」
「確かにあれはなー」
 思い当たる節が有り過ぎて、お互い顔を見合わせ笑ってしまった。

「あそこまで入れ込むことが出来るのも逆にカッコいいよ」
「そっかー、う〜ん・・・でもなんか、あいつがモテるの認めてるみたいでヤダ。」
「なんだよそれ」
「分かんね」


「あ、今ポツリと来なかった?」

「え、マジ?」
「うん。ほら、降って来た」

「早く帰ろうぜ」
「うん」



 雲に覆われた灰褐色の空から、雨の粒がポツリポツリと二人を微かに濡らし始める。
 二人はすぐさま駆け足で自転車置き場まで向かった。
 


「阿部のやつ送り狼になんなきゃいいけどな」

 うそぶ
 嘯きからかうような口調で発せられた水谷の軽い言葉。
 しかし、いつもの冗談と分かっていても、隣を走る栄口は返す言葉がすぐには見つからなかった。


「だといいけど・・・」

 一歩遅れて栄口が呟く。
 彼の表情は引き攣った笑顔としか言いようが無かった。



to be continued・・・  >>>夏雲3





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