Count down12/30 2001.12.30



 12/30。大晦日の前日と言う事で、どこもかしこも年越しの為に大賑わいとなり、それは不二家も例外ではない。
 青学メンバーに加え不二家の家族は、明日のカウントダウンに向けて大忙しだった。まさに師走の忙しさを物語っているかのようである。


「お〜い、不二〜!!これってここでいいの〜!??」
「あぁ、それはこっちに置いておいて」
「なぁ、っんで帰ってきたと思ったら俺までこんな大仕事させられなきゃいけない訳!?」
「しょうがないでしょ。人手が足りないんだから裕太も手伝ってよね」
「別にいいけどさぁ〜玄関開けた途端、はいこれって、兄貴からダンボール渡されてびっくりしない方がおかしいって」
「すまない。帰ってきたばかりだというのにこんなこと頼んでしまって。他の者は買出しに行ってしまって丁度人がいなかったんだ」
「あっ・・いえ!!全然っ!!もう俺どんなこともやりますんで・・!!」
「何だよ、手塚の事はちゃんと聞くんだ…へぇ、そう…」
「‥っんだよ……!!」
「クス。別に?」
「ほら、不二も裕太君も喧嘩してないで」
「大石、別に喧嘩なんてしてないよ。ほら、この通り」

 と、不二は仲の良さをまるで見せつけるかのように笑顔で裕太に抱きついた。
 裕太は離せと抱きつく周助を剥がそうとするが、一向に剥がれる気配は無い。裕太が周助の餌食になるのも時間の問題だろうか。

 そんなことはさておき、肝心のカウントダウンパーティーの準備は着々と進んでいた。
 不二の母、淑子はおせち料理の下ごしらえをし、姉の由美子は洋菓子を作り、他のメンバーは飾り付けや、準備にとそれぞれの役割に順じていた。

「クス。ねぇ、母さん。周助と裕太、本当楽しそうね」
「そうね、二人ともこんな大勢のお友達に囲まれて幸せね」

 仲良く作業をしている二人を見ていた姉とは母は、そんな二人を見てクスクスと遠めで微笑ましく笑っていた。
 そんなことを言われているとは、もちろん当の本人達は全く気付いていない。

「ただいま。クラッカーとかいろいろ買ってきたよ」
「お疲れ様。丁度良かった。ねぇ、乾。これ付けてくれない?」
「あぁいいよ」

 乾は長身を活かし、不二から飾りの一部を手渡されるとさぞも簡単に高い位置に飾り付けた。

「ありがと」
「こういう時自分のやれることは助け合いだろ」
「クス。そっか。桃と海堂は喧嘩しなかった?」
「あぁ、まぁね。とは言ってもやっぱりどのお菓子を買うかで多少もめたがね」
「そうなんだ、皆見てたでしょ?クス。ご苦労様」
「二人を宥めるのは先輩の役目だろ」
「乾、こっちも手伝って〜!」
「ほら、英二が早速呼んでるみたいだよ」
「忙しいな。あぁ今行く」

「不二、これはどうすればいい?」
「う〜ん、どうしようか…タカさんが決めてよ」
「えっ…俺が!?」
「うん。タカさんはどこがいいと思う?」
「そうだなぁ……ここはどうかな?」
「いいんじゃない?ねぇ、それ僕付けたいかも」
「でも不二の背だとちょっと届かないんじゃないかな…?」
「クス。だからね、君が僕のこと上にあげてよ」
「えぇ〜っ!!?ちょっちょっと待って。だって皆いるだろ!?不二のお姉さんだってお母さんだって、それに裕太君だって皆いるのにそんなこと出来ないよ…っ!」
「別に僕達付き合ってるわけでもないんだし平気だよ」
「でもさ、さすがに抱き上げるのはちょっと…」

「ダメ?」
「ダメじゃないけどやっぱり恥ずかしい…かな」
「そっか…僕、同じ男なのにいつもこういう時背の高い奴にやってもらって<ちょっと寂しかったんだよね…」
「不二…分かった。分かったよ。俺が抱き上げるから」
「本当??やった、ありがとうタカさん」
「不二のあんな顔見せられちゃしょうがないだろ」
「クス。だからタカさんって好きだよ」
「ふっ不二…っ!!?」
「ごめん、冗談だって。じゃぁ、お願いね」
「うん。しっかり持ってるから安心して」
「うん」

 河村は不二の後ろに回り、抱き上げた。細身の不二の身体はひょいっと腕力のある河村の手によって上に上げられた。

「よいしょっと…届く?」
「うん……これでいいかな」
「そうだね、いいんじゃない?」

「あ〜っ!!不二、面白そうな事されてる〜っ!ねぇねぇタカさ〜ん、俺も抱っこして欲しい〜!!」
「えぇっ!!?今度は英二まで!?」
「ねぇやってよ〜!!すっげぇ楽しそうなんだも〜ん!!」
「英二、タカさん困ってるじゃないか」
「え〜?だって不二だけやってもらってズルイよ〜!!」
「クス。じゃぁ英二、大石にやってもらったら?」
「あっそだね。ねぇねぇ大石〜俺にもやってよ〜!!」
「ちょっと待ってくれよっ・・俺、英二を抱き上げられる程、腕に自信は無いぞ!?」
「ねぇダメ〜!?」
「しょうがないなぁ…落っこちても文句なしだぞ?」
「うんっ!」
「もう…んっ・・」
「わっちょっと上がった!大石、このまま上まで上げてくんろ!!」
「うっ…英二、これ以上上がらないよっ…わぁっ・・!!」

 ドタっと大きな音を響かせたと同時に、二人は大石ものとも崩れ落ちてしまった。
「だっ大丈夫か!?」
「うわっ大丈夫!?」
「にゃぁ〜・・頭打った〜……!!いて〜よぉ〜…」
「ごっごめん、英二っ…」

 身体ごと下に叩き付けられてしまい、大石は必死に英二の頭を擦っている。一方英二は頭を抱え、半ば半べそ状態である。

「何やってるんだ、全く。人様の家でふざけるんじゃない」
 一部始終を見ていた手塚からすかさず檄が飛んだ。

「クス、ねぇ今度は皆して面白い事やってるわよ」
「まぁまぁ、仲良しなのね」
「ねぇ母さん、味これでいい?」
「そうね、いいんじゃない?」
「良かった。せっかくのカウントダウンだものね、盛大にやりましょ」

「姉貴、出来た!??」
「まだよ、裕太ってば本当気が早すぎるんだから」
「ちょっと味見っ」

 甘いものが大好きな裕太は待ちきれなかったのか、由美子の持っていたボールから生クリームを指ですくい、ペロリと舐めてしまった。

「やだ、まだって言ってるじゃないっ…!!」
「へへっ旨い」
「もう〜……」
「裕太、何やってるの。まだ仕事あるんだからね」
「分かってるよ、今やるって」

「あっ姉さん、僕もちょっと味見していい?」
「今度は周助までっ…!?行儀悪いからやめてよね!」
 今度は周助までがボールから生クリームを拝借してしまった。指に付いたクリームを、周助は舐めて一言続ける。

「クス。美味しい〜」
「やぁねぇ、うちの弟達は二人して同じことしてるんだから。そう思わない?母さん」
「フフ…いいじゃない、皆良くやってくれてるんだから」
「そうだけど・・・」

 時計の針が18時を指す頃、不二家のリビングは色とりどりの飾りに囲まれ、華やかになっていた。

「とりあえず大体出来たね」
「あぁ、後は明日を待つだな」
「じゃぁ、とりあえずお疲れ様〜!!かんぱ〜い!!」
「さぁさ、皆食べて頂戴ね」
「ありがとうございます」
「あっこれウマ〜い!!ねっ由美子さん、もっとちょうだいっ!!」
「フフ、沢山あるからいっぱい食べてね」
「わ〜い、いただっきま〜す!!」

 皆が大はしゃぎしている横で、淑子は和食の乗った盆を手塚とリョーマの前に運んだ。
「手塚君たちの為に和食も作ってあるからこちらもどうぞ」
「わざわざすみません、頂きます」
「ねぇ先輩。俺も和食好みなんだけど、部長も見るからにそれっぽいっスよね」
「まぁな。うちはいつも和食なんだ」
「やっぱ日本人は和食っスよ」
「あぁ、気が合うな」
「ハハっ…手塚先輩と気が合うってなんか変な感じっスね」
「そうか?」
「うん」
「ねぇ、手塚と越前君もこっち来て一緒に写真撮らない?」
「いいっスよ」
「ほら、手塚もおいでよ」
「あぁ」

「じゃぁ母さん、シャッターお願いね」


「えぇいくわよ、はいチーズ」

 カシャっというシャッターの音とフラッシュの光と同時に青学メンバーと由美子の楽しげな姿は1枚の写真に収められた。


 後日、出来あがったその時の写真の中に、裕太の頬にキスする周助と驚く裕太の姿が写ったものがあったことで、その写真が皆の笑い話となったことは言うまでも無かった。


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