New year1/2 2001.1.15



「おはよう」
「あら、遅いおはようね」
「ちょっと二日酔いなのよ…」
「胃薬持ってくる?」
「ううん・・平気…」
「姉貴、ちょっと……」
「何よ」


 先に朝食をとってテレビを見ていた裕太は、返事も聞かぬまま強引に由美子の腕を引っ張ってリビングを出て行ってしまった。


「ちょっ・・ちょっと!離しなさいよ」
「昨日周助とヤったんだろ」
「何を・・」
「何をって…」
「…はぁ・・そのことね……周助に悪気は無いのよ。だからもうそのことには触れないでちょうだい」
「だからってあんな・・っ!」
「…ほら、周助が起きてきちゃったじゃない」
「兄貴……」

 階段下にいる二人が上を見上げると、2階から周助が何食わぬ顔で顔を覗かせていたのである。
「やだなぁ。二人して密談?」

 静まった家内にトントンと階段を降りてくる周助の足音が響く。それは、静寂の中で聞える重い足音。
 軽く一息つくと、由美子はフォローするかのように周助に告げた。

「気にしないで、別に貴方を責めている訳じゃないのよ…」
「昨日あの後姉貴とヤったんだろ!?どうなんだよ……っ!?」

 しかし、由美子のフォローも全く気にも止めずに裕太は周助の両肩を掴み、声を問いただした。
 が、周助はその手を払い退け平然と答える。

「そうさ、ヤったよ。とても気持ち良かったね。クス。こう言えば満足かな?」
「お前……っ!」
「周助、裕太もいい加減にしなさいっ……!!」
「姉さんは黙っててよね」
「今母さんもいるんだからっ…分かるでしょ……!!」
「とりあえず上行こう…」

 裕太の言葉に二人も納得してリビングには戻らず、自分たちの部屋のある2階へと上がっていった。
 すぐそこには朝食を用意する母のいるリビング。

 3人の母、淑子は子供達の間でこのような関係があることを、想像した事もないだろう。むしろ、そう結び付けられることが普通ではない。


 3人だけ秘密。
 3人だけの関係。


 食欲を誘ういい匂いがここまで伝わっていた。



 2階に上がると、最後に入っていった裕太は部屋のドアを閉める。
 そして鍵のかかるガチャという擬音が、この部屋を密室にと変貌させたことを意味していた。

「ここなら母さんに聞かれる心配もないよね。さぁ何を話すって言うの」 
 一番近い裕太の部屋で始めた密話。

 ベットに腰掛けると溜め息混じりに周助は吐く。見るからにそれはやる気のない言い方であった。


「まずは兄貴だ。お前、自分の気分で姉貴をいいように使うなっ!」
「クス。言ってる意味が分からないよ、裕太」
「姉貴も姉貴だよっ!何周助の言いなりになってるんだよ…っ!!」
「別に私は……」
「とにかくっ!もう他に人がいるとこであんなことすんなよなっ!」
「なるほど…裕太は僕に妬いてるんだ?」

「はぁっ!?違げぇよ!!」

「そんなにしたいならはっきり言えばいいじゃない。全く裕太はいつまでたっても子供なんだから」
「ヤダ、そうだったの?裕太」
「だからーっ!!違うっての!!」
「クス。でも、どっちみち僕らは昔からこういう関係を持ってたわけだし、裕太も気にすることないんじゃない?ねぇ姉さん」
「まぁ確かに周助の言うとおりだけど…」
「何でお前らそう簡単に解決できるんだよっ……!」

「そんなの簡単な事だよ。だって僕は姉さんも裕太も大好きなんだもの。それは誰にも譲れないからね」

「っ…」
「もういいじゃない、どのみち気づかれなかったんだから。やっぱり欲望には勝てないわよ」
「したいと思ったからする。それが動物の心理というものでしょ」
「呆れたよ。ホンっとお前ら最低な姉兄だなっ…」
「クス。でもそれでも好きなんでしょ?」
「うっ……」
「もうこの話は終わりっ!母さんが朝食作って待っててくれてるんだから早く行きましょ」
「そうだよ、元はと言えば全部2階に上がろうって言い出した裕太が悪いんだから」
「おっ俺のせいにすんなよっ!!」

「さぁ早いとこご飯食べなきゃね」
「そうよ。私だって今日はやらなきゃいけないことがたくさんあるんだもの」


 気づくと、裕太を背に二人はすでに階段を降り始めていた。
 どんな時もマイペースな二人だ。似た者同士とはこういうことを言うのだろうか。


「俺の話聞けよなーっ!!」

 その後、裕太の叫びが空しく部屋に響き渡っていたことは言うまでもなかった。
 取り残された裕太はただ苦笑いするしかなかったという。


 そんな裕太を後目に、彼の姉と弟は可愛い弟のことを思い、顔を見合わせクスクスと笑い合っていたことなんて、当の本人、裕太はこの先ずっと気づくはずもないのだろう。


 元旦から一夜明けたその日の朝は、不二家の微笑ましい兄弟愛を感じられる一面が垣間見れた出来事から始まることとなった。


A Happy New Year 2002・・・A good year!