祭りの音色4 2001.10.4




 桃城と海堂が居なくなってからというもの、何だか無性に居心地が悪い。
 別にあの二人が居ないからって、夏祭りは終わった訳じゃないのに。なのにどうしても二人のことを気に掛けてしまう。

 皆、気丈に振舞っていたが、残されたメンバーは各々そんなことを思わずにいられなかった。
 手塚に至っては顔には出さないまでも、さすがに少し言いすぎたかと反省してるようだ。


「なぁ、やっぱり桃と海堂連れ戻さない…??中学最後の夏休みにせっかく皆で集まったのに俺こんなのヤダよ…」
「うん。越前君はどう思う?」
「俺は別にどっちだっていいっス…」
「やっぱり俺は皆一緒で過ごしたいな…」
「こんな気持ちじゃ却って楽しめないしな。手塚、手塚だってやっぱり皆一緒の方がいいだろう?」

「あぁ、俺も言いすぎた…反省している」
「じゃ、決定だね。確か桃城が携帯持ってたよね」
「掛けてみるか」


 意見が一致したところで不二の携帯で桃城を呼び出すことにした。しかし、一向にその呼び出し音が止まる気配は無い。
 こんな人込みの中、自力で二人を見つけるのは到底難しいかもしれない。運良く携帯なんぞを持っていたおかげで、かなり期待できたのだけれど。

「うーん。何か出ないよ?」
「帰っちゃったのかな」
「あっ桃ってば海堂のこと追っ掛けてたよね。あの二人真っ最中なんじゃない」
「ぶっ…!!なっ何言い出すんだよっもう不二も笑うな!!」
「だっだってあの二人がだよ?あんな顔してさぁ」

「ねぇ先輩。刺していいですか?」

「くく…嘘だよ・・ごめんね。ごめんってば」
「不二先輩なんて嫌い」
「それ聞き捨てならないね。ホントかな、ねぇ越前くん?」
「何が言いたい訳?」
「クス。別に?」

「もうお前らふざけてないであいつら探すぞ!」

「はいはい、分かってますよ」
「なぁ、俺思ったんだけど迷子の呼び出しして貰うとかはダメ?」
「うーん確かに普通に探すより効率的だよな。よし、英二。とりあえず本部行ってくるか。そういうことで皆、後で合流しよう」
「おっし!じゃっそうゆうことで後はよろしくー」

 大石と英二が本部に向かったところで、残されたメンバーはそれぞれ桃城と海堂を探しに出ることにした。

 しかし、そんな状況の中不二とリョーマはまだふざけるのを止めなかったせいで手塚から怒られ、その上一纏めにされ、二人は一緒に探す派目となってしまった。


「あーぁ。先輩がふざけてるから俺まで怒られちゃったじゃん」
「ふざけてたのは君でしょ」
「先に仕掛けたのは不二先輩」
「元はと言えば桃をしっかり繋ぎ止めておかなかった君が悪いんじゃない」
「一体いつの話っスか!?それに俺、桃先輩の保護者じゃないんで」

「じゃぁ何かな。あぁごめん、君は飼い猫だったね。ご主人様はお出掛けだなんてつまんないでしょ」
「…先輩こそ部長と一緒じゃなくて残念っスね」
「クス。君も本当いい度胸してるよね。このボクに歯向かう事がどういうことか分かってる?」

「さぁ。どんな災いが起こるか今から楽しみにしてますから」
「越前くんのその自信、ボク思いっきり豪快に崩したい気分だね」
「やってみます?」
「しょうがないなぁ、越前くんがそう言うならボクも受けて立つよ」
「クス。不二先輩ってホント負けず嫌いっスよね」
「君こそ人のこと言えないんじゃないの?」

「あ〜あ〜俺の負けっスよ、負けましたぁ。先輩と口喧嘩したら心が弱いやつ絶対へこみそう。部長も大変だわ」
「クス。気が強いのは姉さん譲りだからね」
「あーあの怖そうな人ね」
「ねぇボク達探さなくていい訳?ってもう座り込んでるけど」
「休憩っスよ、休憩。桃先輩なんて勝手に出てくるよ」

「そっそりゃねぇだろ、越前!!」

…今、後ろから桃城の声がした…よね?

振り返ってみると、そこには桃城と海堂が立っており、
ボク達はいきなり二人が現れたものだから少し呆然となってしまった。

「えっ何やってるんスか!?」
「お前こそ何やってるんだよ、不二先輩と二人きりで〜…!」
「俺ら、部長に桃先輩と海堂先輩探すようにって言われて、それで…」
「二人とも、今までどうしてたの?もう結構な時間経ってるよね。
もしかしてこんなに長い間一緒に居たの?」

「あーまぁ飯食って、それからどうすっかなーって感じで居たんですけど…やっぱ、俺達が悪かったし謝ってもう一度皆と一緒にいたいなってことで話が落ちついて。で、とりあえず会場の方戻ろうとしてたんス」

「この犬猿の仲の二人がずっと一緒に居たの?明日雨でも降るんじゃない」
「おい、てめぇ今なんつった!?」
「まぁまぁ、落ちついて。じゃ、とにかく二人も見つかったことだし手塚に電話して、皆のところ戻ろうか」
「そうっスね。すみませんでした」


クス。まぁ、一夏の思い出にはちょっと苦い経験だったかな…
でも、こうやってボク達大人になっていくんだよね。

「おいーどこ行ってたんだよ!?携帯も繋がらないし」
「あっ俺全然気づかなかったみたいで…すみません」
「何か妖しいよね…」
「にゃに〜?お前ら一体何やってたんだよ!!」
「べっ別に普通にしてただけっすよ!なぁ?」
「あっあぁ…」

「妙に否定するとことか余計妖しいよねぇ」

「不二先輩まで〜待って下さいよ〜俺と海堂は無実ですって〜!!」
「とにかくまたこうして集まれて良かったな。ほら、手塚…」
「…年に一度の夏祭りだというのに俺も少し言いすぎた。すまない」
「全然平気っス。俺、部長の怒るとこ大好きなんで」
「わっそれってマゾ!?」
「ちっ違いますよ!!部長の怒り方って威厳があって、俺尊敬してるんですから」
「まぁ祭りはもう終わっちゃったけど俺達の祭りはこれからだよな。よし、花火でも買って最後にぱーっとやるか」
「やりー!そうと決まればコンビニだよな」
「ギャハハ。英二先輩、はしゃぎ過ぎっすよ」


会場の後片付けをする辺りを通り、
終わってしまった夏祭りの侘しい雰囲気をひしひしと感じながら、
ボク達の夏は過ぎていった。

けれど、皆の脳裏には祭りの音色が鮮やかに響き渡っていたことだろう。
花火をしている皆の顔には、たくさんの笑顔が零れていた。
先程のことなんて全部忘れてしまうくらい、良い思い出が出来た。


ボクの中三の最後の夏休みらしい夏休みはこうして終わる。

しかし、ボク達の青春は終わった訳ではない。
まだまだこれからだ。