When You Wish Upon A Star13 -星に願いを- 2002.11.12



かなり長い時間バスに揺られ、どうにか小樽市内まで来ると
僕達はようやく見えて来た到着地に車内からは歓喜の声が上がった。

さすがに長時間座ったままだと、肩や腰が痛くなってしまい
僕は首をぐるりと回して、その場で軽く伸びをした。

今日もまたバスの中で寝てる英二に小声で声を掛けると、
英二は思った以上の長旅に不機嫌そうな態度で目を開ける。

「英二、もうすぐ着くみたいだよ…」
「行く前から疲れたぁ…」
「着いちゃえば楽しいことも待ってるよ、きっと」
「だといいけどさ〜」

「ほら、見てご覧よ。洋館綺麗だよ」
「あ、ほんとだ〜あれとか可愛い〜・・へぇ、こんなんなんだぁ」
「クス、機嫌戻ったみたいだね」
「え?俺、そんな機嫌悪そうにしてた??」
「クスクス。ちょっとね」
「へへっ…ごめーん」

「それではバスを降りて班ごとに別れて下さい。それぞれ決めたコースを間違えないように」

僕達の班では、ヴェネツィア美術館やオルゴール堂などを
見学することになっていた。

可愛いものをわりと好む英二ならではの選択だよね。
綺麗な硝子細工やロマンティックなオルゴールの音色に
英二でなくても見入ってしまった。こんなステキなところを一緒に
廻れるなんて、僕はとても嬉しいよ。

「すっげぇ…俺、お母さんと姉ちゃん達のお土産にオルゴール買ってこうかなぁ」
「そうだね、僕も母さんと姉さんに何かあげようかな」

女性はこういうものを喜ぶからね。
自分の母親と、二人の共通点である姉へのお土産選びに、
僕達はあれにしようか、それともこっちにしようか、と見て廻りながら
楽しい時間を費やした。

そして、いろいろ悩んだ末ようやく品物も決まって、
なんとか会計を済ませることが出来た。

「あっれ?不二、さっきもう買ったんじゃないの?」
「クス。これは英二に…それでこっちは僕の。ほら、色違いだけどお揃い」

僕が色違いの小さなオルゴールの陶器を2つ手にして見せると、
英二はパァッと目を輝かせて、とても嬉しそうな顔を見せた。

僕達へのお土産も大事だけど、僕はこんな顔が見たくて
姉さん達へのお土産を探しながら密かにずっと考えてたんだよね。
クス、照れくさいから今の話は内緒だよ?


「わーわぁ〜ありがとぉ…不二」
「良かった、英二に喜んで貰えて」
「うん!すっごい嬉しい…ありがとねぇ」
「皆待ってるし行こうか」
「だね」

英二は大事そうに僕の手渡したそれをバックにしまうと、
僕の手をそっと繋いで微笑む。僕も嬉しくなって微笑み返す。
そんなちょっとしたことが思い出となって、僕達の心に一つ、
また一つと刻み込まれていくんだ。

そんな楽しい時間を思い出だけじゃなく物に残そうと、
僕は持ってきていたカメラで英二のいろんな表情を写真に収めた。
時には周りに居た人間に一緒の写真を撮ってもらったりして。
フィルムはまだ二日目だというのにもう3個目に突入していた。


少しばかり遅いお昼を指定場所で済ませると、
今度はロープーウェイに乗って小樽の街を一望出来る山頂まで
足を伸ばすことになっていた。

午後になって僕達は小樽の街を一望しながら、のんびりとした
時間を過ごした。部のメンバーと一緒に写真を撮ったりはしゃいだりし、
対した事はしてないけれど、すごく有意義な時間だったと僕は思っている。


日も暮れてくると、ライトアップされた夜景が僕の目の前に広がった。
明かりで照らされた小樽の街は、とても綺麗で、それでいてどこか
哀愁漂うものが有り、僕はその光景が深く印象に残っている。

学年内のカップル達は寄り添い、もう自分達だけの世界だ。
僕も人気の無い所で英二と手を繋ぎ、肌寒さを互いの体温で補い合った。

「綺麗だね、英二…」
「うん…」
「好きだよ、英二」
「ハハッそれ昨日も聞いたぁ・・」
「クス。そうだっけ?」

「うん…」
「クス。じゃぁ昨日より好き…」

「ブッ・・それずるいよぉ…」
「口開けて…」

「んっ…」

目を閉じる英二に僕は唇を落とした。
開いた口に舌を挿れ、蕩け合うようにクチュクチュと絡める。

「ふわぁっ…」
「ここが外じゃなかったら押し倒してるのにな」

「…じゃぁさ、帰ってからしよう?」

「うん。寒さなんて吹き飛ぶくらい熱いことしようね、英二」

「ん・・楽しみにしてるにゃ」

街のネオンに見惚れてる他の教師や生徒達のことなんて忘れ、
木陰に隠れて僕達は何度も唇を重ね合い、そして躰を
寄り添うように抱き合っていた。

僕は本当に小樽の夜景は綺麗だと思った。


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