When You Wish Upon A Star16 -星に願いを- 2006.9.18

『When You Wish Upon A Star -星に願いを-』(2003/11works)書き下ろし最終話


僕達は、冷める事の無い熱った躰を幾度も重ね合った。
厭らしい格好で肉体同士を激しく絡め、抱き締め、
そして二人寄り添い永遠を誓い合った夜は、あっさり過ぎる程、
呆気なく過ぎていってしまった。

それから一夜明けた今日は、帰宅の途へ着かなくてはならない、
修学旅行最後の日でもある。
 

僕はその日、カーテンの隙間から差し込んで来る朝日で目を覚ました。
昨夜は一つのシングルベッドに互いの躰を密着させ就寝した。

隣には上半身裸で躰を丸めて、今だ起きぬ英二の姿がある。
僕も下着しか身に付けておらず、行為の後始末をして
すぐに眠りについてしまった状態だ。

掛け布団を持ち上げベットから足を下ろすと、
その格好で窓の方へ足を向けた。

三日間続いた情事の疲れを全く感じさせない、
不思議なくらいに気持ちのいい朝だった。


目に感じる太陽の強い光が、僕の心を元気にさせる。


口元には半握りの手、コロンと横向きになって可愛い寝顔を浮かべる
英二の姿を微笑ましく思うと、僕はトイレに向かった。
直視した自身は、男の性である特性を表し、
英二を求めるかのようにも見えた。
其れに対し溜息一つ付くと、僕は用を足した。

しばらくして英二が起きてくると、僕は朝の挨拶のキスを交わし、
時間も有ったので少しだけエッチなことをした。
お互いの心を確かめ合うように。



最終日である今日の目的は、札幌まで出て市内名所観光だ。

市内を短時間で何ヶ所か見て周り、
最後に向かったのがクラーク博士の像が有る羊ヶ丘展望台だ。
‘Boys,be ambitious.’あの有名なフレーズの語源者である。

北風が拭く中、僕達は銅像の前でクラス写真を撮り
全員で集合写真を撮ると、テニス部の仲間達とも記念写真を撮ったり
遊んだりして、最後の思い出作りに勤しんでいた。

北海道の凍て付く寒さなんて忘れさせるくらい、
僕達はそこでの時間を楽しんでいた。


多めに持ってきていた予備のフィルムはとっくに無くなってしまい、
この最後のフィルムも現地で買ったものだった。

「クス。英二、いくよー?」

銅像と同じポーズを決め、
楽しそうにカメラのレンズに映る英二を僕はパシャッとカメラに収める。

その後も僕達は彼の創作活動に付き合わされることになり、
その度に皆のフィルムは英二と僕等の可笑しな写真で、
どんどん枚数を減らされて行くことになってしまった。

だけど楽しい写真は旅の付き物ということを皆も承知していたし、
僕達自身もふざけた写真を撮るのはとても楽しかったので、
最後まで英二に付き合ってあげた。

手塚に限っては、僕達のはしゃぎっぷりに
呆れた様子だったけどね。クス。



こうして、僕達は帰りの飛行機に乗っている。
英二は遊び疲れ切った小さな子供のように、
すやすやと寝息をたて東京までの空路を寝て明かした。
僕もその隣で少しだけ疲れた躰を休めることにした。

再び気付いた時には、もう窓の外が真っ暗になっていて、
時折電気の明かりが下界の位置を微かに示している程度だった。

それからしばらくして、徐々に明るさを増す地上を移動する飛行機は
羽田に到着した。


僕達は再び東京に戻って来たのだ。
沢山の思い出をお土産に抱えて。



まとめられた荷物の山から自分の物を探し出すと、
点呼を取り現地解散となった。

僕のところは姉さんが迎えに来ていたので、
その車で家まで帰ることになった。

皆とはここで別れ、英二と一緒に車に乗り込んで家路へと向かう。
そこから長い旅はまた続いた。

丁度帰宅時間のピークだったのも有り、道がとても渋滞していたんだ。
それでも僕は、英二と一秒でも長く過ごせると、
そのゆっくりとした時の経過にも嬉しさを感じていたくらいだった。


無事に英二の家まで彼を送り届けると、僕達は自宅へ向かった。
この長いようで短かった旅が終わりを告げた時、
僕は確かなものを感じ取っていた。


それが何かは分からなかったけど。



家の前まで来ると、北海道へ出掛けたあの朝のように
母さんが玄関前で、僕の帰りをわざわざ待っていてくれた。

車を降りて、僕は三日ぶりに見る母さんの元気そうな顔に
ほっと肩を撫で下ろす。そして、ただいまの挨拶を声掛けた。

「ただいま、母さん」
「お帰りなさい、周助。寒かったでしょう?すぐにお風呂入れるようにしてあるわよ。ゆっくりつかって冷えた躰、温めなさいね。由美子、お迎えご苦労様」

僕は、大きな荷物を抱えて、ようやく三日ぶりの我が家へ戻った。
やっぱり自分の家は落ちつくよね。どことなく安心感が込み上げて来るよ。

「荷物置いたらお風呂入るよ。ご飯はそれから食べるね。送ってくれてありがと、姉さん」
「クス、旅の話は周助がお風呂出てからね」
「うん。姉さん達にお土産買って来たから後で持っていくね」
「フフ、楽しみにしてるわ」

旅での積もる話も後回しにし、僕は二階の自室に荷物を置いて、
ご飯より先に旅の疲れを癒そうとお風呂に入ることにした。


服を脱ぎ、バスルームのドアを開けると僕は熱い湯船に浸かり、
冷えた躰をじっくりと温めた。じわりじわり来る熱に、
僕の躰は芯からぽかぽかした温かさが込み上げて来る。

こうやってお風呂に入って何も考えず、
ただボーッとしているといろいろなことを思い出す。

旅での沢山の思い出を。

僕は英二の見せた様々な表情を思い出し、
一人笑ってしまった。

 
その日は英二と少しだけ電話でしゃべって、早々に床についた。
家に帰って来たという安心感からか、旅の疲れからなのか、
僕はいつもに無いくらい深く熟睡することが出来た。



翌日は、昨日帰りに立ち寄ったおじいさんの写真館に、
頼んでおいたフィルムの現像写真を取りに行った。

あの四日間、数え切れない程押したシャッター。
撮ったネガの数々は、写真になって大量に僕の前に差し出された。
その写真を一枚一枚、眺めていく。

クス、こんなこともあったね・・・
ハハッ、これは二人で手塚のことを隠し撮りした時の写真だ。


僕は思い出の詰まった写真をゆっくりと眺めながら、
この修学旅行での思い出を色鮮やかに蘇らせていた。


英二と抱き合ったあの夜のことも。
そして、永久を誓ったあの夜も。


いろいろなことが思い出され、
僕の心を様々な想いが駆け巡った。

住んでる場所に帰って来て、
僕は、この修学旅行が一生忘れられない思い出になったと
改めてそう思うよ。


また、いつか
二人で行けることが出来たら、
次は何を祈ろうか。


クス。
ねぇ、英二。

永遠なんて有り得ないかもしれないけど、
それでも僕はこれからもずっと
君と共に生きていきたい。

こんな僕を
英二は笑うかもしれないけど、


僕は本当に君が大好きで、
どうしようも無いくらい
大好きで。

きっとまた
同じ事を思ってしまうんだろうね。


あの眩しいばかりに煌く
星達に向かって。

“ずっと一緒に居られたらいいのに”と。


Fin.












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追記*2006.9
長いことサイトに掲載していたシリーズラストは15話までだったんですが、
数年前オフ本手に取って頂いた方にはご存知の通りまだ続きがありまして、
同人誌でまとめた方の最後が上の話になります。

今読み返してみても、この部分があってやっと完結だと思うので、
せっかくなので今回4日目のみサイトにも載せてみました。