When You Wish Upon A Star8 -星に願いを- 2002.11.2



「不二の好きにして…」

沈黙を続けていた英二がポツリと呟いたのは、
それから少し経ってからだった。

「……」

僕が黙っていると、英二が繋いでいた手を強く握り返して来る。
その手から伝わる温もりは、とても緊張しているように見えた。

それは顔の表情にも表れていたから。
俯いた顔からは、いつもの笑顔が消えていた。

「怖がらなくていいんだよ。優しくするから」

先程の僕の強い主張にすっかり怯えてしまったのか、
強張る英二を宥めるように、僕は柔らかい口調で彼の耳元で囁く。

そして、人が居ないのを良いことに
そっと口元にキスした。



湯気の上がる熱い温泉に肩まで浸かり、
冷えた躰をじっくり温めてると次第に躰全体がポカポカして来て、
この冷え込みも忘れてしまうくらいだった。

そうなると外の景色を眺める余裕も出てきて、僕達は星空に目をやる。
東京都心では滅多に見られなくなってしまった星の瞬き。

僕達は我を忘れてその綺麗さに見入ってしまう。


「毎日こんな夜空が見える所に住めたら良いのにね」
「うん…なんか感動するってこういうことを言うんだよなぁ」


僕はこの瞬間を忘れないよう、そして永遠を求め星達に願った。

“ずっと こうして居られたらいいのに”


胸の奥で揺らぐ想い。隠された本心。
今すぐこの手の中で君を抱きしめられたらいいのに。

僕は臆病だから。
それさえも出来ずに居るんだ。


永遠なんて無いことに気付いているくせに
僕は直視出来ずに居る。


いっそこのまま奪い去ることが出来たらどんなにいいのに。
奪い去って僕だけのものにしたかった。



だけど、それさえも…


「不二?」

僕の心を見切っているように
優しく笑みを浮かべる君を見てると、
たまに僕は泣きたくなる。

英二にすがりそうで、
君に弱い部分を見せてしまいそうで。

それが僕には怖かった。


「ね、そろそろ出ようか?のぼせちゃった?」

そして、君は何も聞かず僕を慰めてくれる。
良い子だね、英二は。




「クス。好きだよ、英二。これからも、ずっと…ずっと」

僕は告げた。



永遠なんて有る訳無いのに。



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