もっと普通の恋が出来たらって思いながら
私はずっと
を追いかけていたのかもしれない

ずっと幻なんかに
わされない
強い愛が欲しかった





幻影 2003.4.19


見上げれば
青い空が
一面に広がっていて

きっと
求めていたのは

こんなものでは無くて


もっとちっぽけな
ものだったのもかもしれない



「ただいま〜」
「お帰りなさい、由美子。ご飯は?」
「ん、食べる。もう私お腹空いちゃったぁ」
「クス、早く仕度するから荷物置いてきなさい」

仕事を終え、今日も私は帰宅の戸についた。
母親に軽く顔を見せ、荷物を置きにと階段を上がっていると、
上から弟の柔らかい声がする。

いつもと同じ不二家での日常風景。
違うのは、彼が私と口に出せない関係にある、ということ…

「姉さん、おかえり」
「ただいま、周助」

いつものように帰宅の挨拶を交わすと
周助の温かい掌が私の頬を伝わって来た。

「外、寒かったでしょう」

そして、優しい抱擁。
周助はいつだって私に優しい。
そう、勿体無いくらいに。

「こんなに冷たくなっちゃったね」
「そうね…」

―――――― 誰かに愛して欲しかった

周助の顔が私の傍に近づいてくる。

受け入れるのは簡単だけど、これはいけないことなんだと、
頭の中では冷静な判断が巡り繰り返され、
幾度と私を現実世界へ引き戻していた。

だから私は今、其れを否定する。

「待って…母さん待たせてるからダメよ」


目に映っていたのは幻。

「姉さん?」
そして周助は不思議そうな顔をして私を見つめるの。


本当のことなんて私にも分からなかった。

「やだ、そんな顔しないで頂戴。悲しいから」

私は気丈に笑って見せる。



―――――― あなたのそんな顔、見たくないのよ





「母さん、これ新作?おいしい〜!」

私はあの後も母の前で普段通り振舞っていた。

「クス。今日の由美子は何だかご機嫌ね。何か良いことでもあったの?」
「えっ…?」

母の何気ない一言が、私の心を揺らがせる。

「そうね…あったのかも」

あった、かもしれない。
けれど、素直に喜んで良いことなのか…
それは私にも分からなかったけれど。

「クス、なぁに?その曖昧な表現」

「えー?そうかしら」

いつか見る現実に怯え
それはまた…

「姉さん、さっきの続きしよう?クス。ほらっ早くっ!」

彼も同じ。


だけど熱い躰はそれを忘れさせ
私達は快楽へとのめり込む――――――



気付けば二人とも裸で隣り合う姿にある。
私は心の闇を吐き出すように口を開いた。

「周助とずっとこうして居られたらいいのに」
「うーんどうだろう。かなり難しいんじゃない?アハハ」

「それもそうね…」

叶わぬ願いを信じる私を
あなたは笑うかしら?


私の表情が曇ったのを見てたのか、
ふいに周助がキスをしてくる。

「僕、溜息なんかついてる由美子姉さんなんて見たくないな」
「も〜うっ!突然びっくりするじゃない」

「ハハッごめんね」
「周助……」

ただ
あなたが愛しくて

可愛くて

「姉さん怖いのよ」


大好きだから――――――

「生きることに怯えてる」

「……」

だから
そんな顔しないで?

「クス。知ってた?」


「でも…あなたが居てくれるから、安心してられるのかもしれないわね」

「クス。家族だもの」

好きになればなる程
二人の距離が遠退いていく気がして苦しかった。

「うん・・・周助の言う通りだわ」

「クス、僕はどこにも行かないよ」

本当に良く出来た弟。

「ずっと姉さんの弟なんだから」

周助の真っ直ぐな想いが
痛い程に私の心を蝕んでいく。

「それに僕の思いも変わらないもの。僕はずっと姉さんが好きだった」

私はダメな姉さんなのよ。
いつからこんな想いを抱えてしまったんだろう

実の弟に対して――――――

「姉さん…?」

「クス。私もずっとあなたが好きだったわ」

周助はもう大人への階段を上り始めてる。

「うん…」

これからもずっと傍に居てくれたら…
そう願うけれど

もうその時は来てるのね。


成長を嬉しく想う反面
これからも私はいつか来る関係の終わりを胸に感じながら
生きていかなくてはならない。

背を向けたあなたが
また少し大きく見えたのは
気のせいだったかしら?


欲しかったのは
本当の愛だけだった



そう私を必要としてくれる
あなたの愛が欲しくて――――――



2002.12.28 works/offfline『幻影』にて










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オフラインで仕上げた周由美本をそのまま文章化。
この「幻影」は自分的にすごく満足してる作品なので、サイトにも載せてみました。
私の周由美の集大成です・・(嘘)でも漫画を小説にするとなると
やっぱり一筋縄ではいきませんね・・・本当文章変だ・・・ちょっとショック。

家族とは何かを問い掛ける内容は「Truth」掲載の”愛欲”に
通じるものがあるかもしれません。簡単なようで難しい、
そういうのがこの人たちっぽくて良いですな。